2025/12/29 17:48

スニーカーファンにとって、「雨の日に何を履くか」という問題は、常につきまとう悩みの一つではないでしょうか。お気に入りのいわゆる“1軍”スニーカーを、容赦なく降り続く雨の中に晒すのは、なかなか勇気がいる行為です。結局のところ、多少汚れても構わない2軍落ち以下のスニーカーや、防水性に特化したスポーツ・アウトドア系のシューズを選ぶことになるのですが、どうにも気分が上がらない。そんな経験をしたことがある方も多いはずです。

そんな長年の議論に、終止符を打つかもしれない一足が登場しました。それが今回レビューする Nike Air Force 1 GTX Vibram です。発売の情報を目にし、「これは雨の日用スニーカーの最適解かもしれない」と思い、久々にAtmosのWeb抽選に参加。結果的には発売日以降も比較的在庫に余裕がある状況ではありましたが、無事に入手することができました。せっかくなので、実際に雨の中を歩き、その実力を確かめてみました。


伝統のスタイルを崩さない完成度の高さ


まず特筆すべきは、そのビジュアルです。下記の画像を見ていただければお分かりかと思いますが、ぱっと見では通常のAir Force 1とほとんど見分けがつきません。これは個人的に評価が高いポイントです。
画像:私物 着用時は付属の平紐に交換しました。

カラーリングは、Air Force 1を象徴するオールホワイト、オールブラックを含む全3色展開(2025年12月現在)。どれも非常にベーシックで、どんなスタイルにも合わせやすい配色になっています。雨の日専用感が前面に出ていないため、「天気を気にせずいつものAir Force 1を履く」という感覚に近いのが魅力です。


Gore-Tex搭載でも“主張しすぎない”美学


これまでもAir Force 1を含め、Gore-Tex搭載スニーカーは数多く存在してきました。ただ正直なところ、Gore-Texのロゴが大きくプリントされたモデルが多く、どうしてもデザイン面で手が伸びなかった、というのが本音です。

その点、今回のAir Force 1 GTXはそのような大きいロゴは排除。Gore-Tex搭載であることを示すのは、アッパーと同色の小さなタグが足首内側付近に縫い付けられているのみ。言われなければ気づかないレベルで、伝統的なAir Force 1のスタイルを邪魔していません。細かいながら、スニーカーファンの心をくすぐるポイントだと思います。

画像:私物 外観からGORE-TEX搭載であることを確認できるのは内側足首付近に付けられたこちらのタグのみ。


専用のVibramアウトソール


そして今回のモデル最大のトピックとも言えるのが、アウトソールにイタリアの高品質アウトソールブランド Vibram を採用している点です。アウトソール側面、「AIR」の文字の下に配置された黄色のVibramロゴが、その証。これもまた主張しすぎず、さりげなく特別仕様であることを伝えてくれる、絶妙なロゴ配置だと思います。
画像:私物 主張しすぎないvibramロゴが好印象。右側は通常のAir force 1です。よく見るとミッドソールの踵部の上半分が出っ張っているのですが、どういう目的でデザインされたのかは確認できませんでした。


アウトソールパターンも通常のAir Force 1とは異なる、独自のデザイン。実際に履いてすぐに感じたのは、路面への食いつきの良さでした。バスケットボール用に設計されたフラットなアウトソールの通常版と比べると、その差は歴然。雨で濡れたアスファルトの上でも、不安を感じることなくしっかりとグリップしてくれます。
画像:私物 左が通常版、右側がGTX Vibram版。粘度の高いラバーと複雑なラグで路面を捉えてくれます。

濡れたタイルの上も歩いてみましたが、スリップする感覚はほとんどありませんでした。さすがに、ほぼ凹凸のないツルツルのタイルでは多少の不安は残りますが、それでも通常のアウトソールと比べると、雨の日の安心感は圧倒的でした。


アッパーの質感と防水仕様


アッパーに使用されているレザーは、通常のAir Force 1と比べても質感が良く、革自体もやや柔らかめ。全体的にワンランク上の素材が使われている印象を受けました。

ただし、ライニングに配置されているGore-Tex素材はやや硬め。そのため、履いた瞬間に革の柔らかさを強く体感できるかというと、正直そこまでは感じにくいです。なお、つま先の通気孔は実際の穴ではなくエンボス加工で再現されているため、水が侵入する心配はありません。
画像:私物 左が通常版、右側がGTX Vibram版。踵の”NIKE AIR”のロゴもGTX Vibram版はエンボス加工です。


実際に履いて気になった点


アッパーについて一つ気になった点を共有させてください。全ての方に当てはまるかは分かりませんが、私の場合、踏み込みの際に内側に向かって屈曲したアッパーが、つま先に刺さるように干渉する感覚がありました。1時間程度歩いていると、結構痛みを感じる状態です。歩行不能になるほどではありませんが、履き慣らしが必要な一足だと感じています。

クッショニングについては、通常のAir Force 1と大きな差はありません。良くも悪くも、いつものAir Force 1らしい履き心地です。


サイズ感と試着の重要性


サイズ選びについては、足型によって注意が必要だと感じました。甲が低く、足幅も広くない私の場合は、通常のAir Force 1と同じサイズ(27.5cm)で問題なく着用できています。

ただし、防水性を確保するためにタン部分がアッパーに縫い付けられている構造上、履き口は通常のAir Force 1よりも狭め。甲高や足幅が広い方は、足入れの時点でストレスを感じる可能性があります。また、ソールに対してつま先アッパー外側の縫い付け角度が通常版よりもやや鋭角なため、足幅が広い方は特に注意が必要です。
今回ローンチされた3色はいずれもNike直営店、もしくはAtmosのみでの取り扱いとなっているため、可能であれば一度店舗で試着することをおすすめします。
画像:私物 内側にGore-Texライニングが袋状に縫い付けられている関係上、履き口が狭くなっています。


総評:史上最強スペックのAir Force 1


総合的な評価としては、履き心地に多少の疑問点はあるものの、もともと耐久性に定評のあるAir Force 1に、Gore-Tex × Vibramという悪天候対応の装備を搭載した“史上最強スペックのAir Force 1”と言っても過言ではない一足です。
雨の日でも気兼ねなく履けて、なおかつ気分が上がるスニーカー。荒天時に積極的に投入できる“道具”として、これほど男心をくすぐるモデルはなかなかないのではないでしょうか。
「雨の日だから仕方なく履く」のではなく、「雨の日だからこそ履きたい」——そんな存在になり得るAir Force 1だと思います。

最後までお読みいただいありがとうございました。