2025/10/28 16:03

Inefficient Worksです。今回はKobe Bryant(コービー ブライアント)がAdidas(アディダス)と契約していた頃のバッシュについて、当時の彼のキャリアと共にご紹介します。


Nikeだけではないコービーの着用シューズ

コービー ブライアントはバスケファンでは知らない人はいないと言っても過言ではない選手です。わずか17歳でドラフト指名されNBA入りを果たした彼は、20年間にわたってロサンゼルス・レイカーズ一筋でプレーし、チームを5度の優勝に導きました。その卓越したスキル、冷静な判断力、そして常に勝利を追求する“マンバ・メンタリティ”は、今なお世界中のバスケットボールファンに語り継がれています。

そんな彼のキャリアを語るうえで欠かせないのが「シューズ」の存在です。コービーはその長いキャリアの中で、バスケットボールシューズの概念を変えていきました。特にローカットバッシュに対する評価を現在のものにしたのは彼、および協業先のNikeの功績によるところが大きいでしょう。そんな彼のシューズへのこだわりを反映したNikeのKobeシリーズは現在も多くの選手から愛される非常に完成度の高いバッシュとして知られています。しかし、あまり知られていないかもしれませんが、彼のキャリア初のシグネイチャーシューズはAdidasから発表されていました。

1996年のNBAデビューと同時にコービーと契約したAdidasは、計5つのシグネチャーシューズを発表しました。

今回はその中で当店にて現在販売中の3足についてご紹介をさせていただきます。


画像: 今回紹介する3モデル(via inefficiemntworks.com)



1997-1998シーズン:Adidas Crazy 8(EQT KB8)

Kobeがリーグ2年目を迎えた1997-98シーズン。彼はこの年、史上最年少でオールスターに選出され、一躍スターダムへと駆け上がりました。そんな彼の足元を支えたのが、初のシグネチャーモデル EQT KB8(現Crazy 8) です。



画像: Adidas Crazy 1(筆者私物)

当時、AdidasのEQTシリーズは「すべてのプレーヤーのための最高のパフォーマンス」を掲げる同社の最上位ライン。その名を冠したKB8は、革新的なテクノロジー Feet You Wear(フット・ユー・ウェア) を採用していました。これは「人間の足の自然な形状を再現し、コートとの一体感を高める」という思想に基づくもので、丸みを帯びたソール形状が印象的でした。

海外のいくつかのシューズレビューでも「安定性と接地感が抜群で、コートをつかむような感覚」と評されています。現代の柔らかいクッショニングとは異なり、反発力を重視した“硬め”の履き心地が特徴。まさにKobeの俊敏で攻撃的なプレースタイルを象徴する一足でした。




1998-1999シーズン:Adidas Crazy 98(EQT KB8 II)

2作目となる Crazy 98(EQT KB8 II) は、前作からの進化を明確に示したモデルです。レザー主体だった前作に対し、今作ではメッシュ素材や透明樹脂パーツを大胆に取り入れたアッパーデザインへ。テクノロジー面では引き続きFeet You Wearを採用しながら、ミッドソールにAdidas独自の高反発素材 adiPRENE+ を搭載しました。


画像: EQT KB8 Ⅱを履くコービー(via slamonline.com


画像: アウトソールはより足裏の凹凸を模したしたデザインとなり、より足裏の自然な踏み込みをサポートしてくれそうな意匠です。(via inefficientworks.com)

当時Kobeはすでにレイカーズの中心選手として確固たる地位を築きつつあり、彼のプレースタイルはより洗練され、シューズもそれに追随するように進化していきました。




2000-2001シーズン:Adidas Crazy 1(The Kobe)

そして、Adidasとコービーの関係において最も象徴的なモデルが、Crazy 1(当時の名称は「The Kobe」) です。冠されていたEQTは省略され、デザインについてもこれまでの有機的なデザインから一転。流線型で近未来的なフォルムへと大胆な転換を遂げました。デザインのインスピレーションは、Kobe自身が愛車として所有していた Audi TT Roadster。車体の滑らかなラインをスニーカーに落とし込むという挑戦的なアプローチでした。


画像: Adidas Crazy 1 "Playoffs" via Inefficientworks.com

従来のFeet You Wearソールは廃止され、フラットなヘリンボーンパターンを採用。
ただし、この“未来的すぎる”デザインは当時賛否両論を呼び、一部では「時代を先取りしすぎたシューズ」とも評されています。


Crazy 1やその後の Crazy 2(The Kobe II)に見られる独特のデザインは、結果的にコービー自身のAdidasからの離反につながったとも言われます。彼は「自分の動きを制限しない、もっと自由なシューズ」を求め、2002年に契約を終了。その後1年間の無契約期間、通称”Sneaker Free Agency”期間を経てNikeと契約し、サポート性を担保した軽量ローカットバッシュという新しいカテゴリーを切り拓いていきました。


画像: Adidasとの契約が終了した直後のシーズンは契約解除に伴うペナルティにより、どことも契約できなかったコービー。ある意味自由になったことで様々なブランドのシューズを履いてプレーしました。こちらの画像ではドラフト同期のアレンアイバーソンモデルであるAnswer 4を着用。(via complex.com)


Crazy 1を履いた2000-2001シーズン、Kobeはレイカーズを2年連続の優勝へと導き、再びチャンピオンリングを獲得します。チームは翌シーズンも好調を続け、マジックジョンソンの時代以来となるレイカーズ王朝を築いていきました。




まとめ:コービーが遺したもの

コービーのキャリアと彼が履いたシューズを振り返ると、それは単なるアスリートとブランドの関係を超えた「革新の物語」だったことに気づかされます。彼はアスリートの中でも特に競技用シューズへのこだわりが強く、特にNikeと契約後は積極的にデザイナーに対して意見を出していたと言われています。その結果として誕生したNikeのKobeシリーズであり、ひいてはAdidasとの契約解除の要因の一つなのではないかと思います。

Adidasとの初期契約時代に生まれたシリーズは、世間に支持されているかどうかはさておき、機能面だけでなくデザインや哲学の面でのちのバスケットシューズの進化に多大な影響を与えたように思います。

現在、コービーが着用したこれらのモデルの多くは海外限定で復刻されコアなファンやプレーヤーから人気を集めています。

特にCrazy 8やCrazy 1は、初のオールスター選出でマイケル ジョーダンとの対戦を楽しむ無邪気な様子や、シャックとのデュオでリーグ三連覇を達成した彼の若き日の情熱を思い出させるシューズに思えます。

当店では、これらのコービーのAdidas時代を代表するモデルの中から、Crazy 8(ローカット), Crazy 98, Crazy 1 の3足を取り扱っています。

Adidas Crazy 8 Low
Adidas Crazy 98
Adidas Crazy 1 "Playoffs"


伝説の始まりを足元で感じてみたい方は、ぜひこの機会に体験してみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。